「多めに渡しておけば安心」という思い込み

先日、ある工場で上流工程の改善をしました。そこは、後工程へ材料を供給する仕事です。

見ると、いつも後工程の使う分より、ほんの少し多めに供給していました。1%か2%の話です。後工程で不良が出ることもあるから、止めないように、と。

工程を止めない工夫としては、悪いことではありません。
でも、私はこう問いました。

「これは、我々が目指す姿から見て、本当に良いことでしょうか」。

おまけが1個ついていたら、大切にしますか

想像してみてください。通販で何かを買って、おまけがもう1個ついてきた。あなたは、その1個を大事に使うでしょうか。

人は、多くあると、一つひとつに向き合わなくなります。5本あるのが当たり前になれば、5本入っていることに、もう誰も注意を払わない。「少し多め」は、優しさのようでいて、実は現場から緊張感を奪っていくのです。

必要分だけ渡し、余りは前工程でまとめる

そこで、こう変えました。上流からは、必要な分だけを供給してもらう。

とはいえ、後工程の実力がまだ伴わない以上、予備は要ります。ではその予備をどうするか。

前工程で、まとめて置いておいてもらうことにしました。

ここで、面白いことが起きます。

これまでは1回あたり5本多く載せていた。10回分なら、単純計算で50本要るはずです。ところが、まとめてみると、10本や20本で足りてしまう。1回ずつ少しずつ渡していた頃には見えなかった「本当に必要な量」が、まとめた瞬間に姿を現すのです。

まとめると、目標と会話が生まれる

いいことは、量が減るだけではありません。

一つは、目標ができること。5本入っているのが当たり前だと、良し悪しが分からない。でもまとめて管理すれば、「今週は使わなかったね」「使っても3本で済んだね」と、はっきり見える。管理しやすくなり、次の目標になります。

もう一つは、会話が生まれること。予備を取りに行けば、そこで前工程と顔を合わせます。「何が良くなかったのか」「なぜこうなったのか」。取りに来たその場で、一緒に考えられる。渡しっぱなしでは、この対話は生まれません。

必要なものを、必要なときに、必要なだけ

我々が目指しているのは、ジャストインタイムです。必要なものを、必要なときに、必要なだけ。

後工程には実力を求め、必要量だけを供給する。そのバッファーは、まとめて置く。まとめれば、意外なほど少なくて足りるかもしれないし、何より、人が自分の頭で考えるようになります。

小さな改善に見えて、効き目は大きい。あなたの現場の「ほんの少し多め」は、安心でしょうか。それとも、考えることをやめさせる仕組みに、なっていないでしょうか。