「在庫は減らせ」が正解ではない?トヨタ式の真の狙い
人生とは決断の連続です。
決断の際、どの価値観でいるか?が全ての拠り所になります。
例えば目覚まし時計が鳴った時、時間を大切にする人は起きて準備します。一方、快適さを優先する人は、あと5分だけ寝ます。
どちらも正解で、価値観で決まります。
最近、製造業の経営に関わる面白い本を読みました。
いま世界ではトヨタ生産方式がどのように進化しているのか!取り残される日本のものづくり 中野冠著 日刊工業新聞社
中野先生は慶應大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究所顧問の方です。
この本は、トヨタ生産方式(TPS)が世界でどのように理解・応用され進化しているかを分析し、日本の製造業が直面する課題を考察した一冊です。
TPSとリーン生産方式の違いや、海外での発展と日本の現状を比較し、ものづくり競争力向上への示唆を提供しています。
そこに、【在庫の考え方】について、欧米型生産とトヨタ生産方式の比較がありました。
これが、大きな「価値観」の差なので、今回は紹介します。まるっきり決断が変わってきます。
まずは、欧米型の紹介。
①欧米型生産方式
基本姿勢:在庫には以下の効用があるので、必要なだけ高く設定すべきである。
・需要変動を吸収できる
・生産変動を吸収できる
・経済的なバッチで(ロットを大きくして)生産できる
・廃棄があっても補てんできる
・機会損失を防ぐことができる引用:いま世界ではトヨタ生産方式がどのように進化しているのか!中野冠著 P75
まさにその通り。よく聞く話です。原価を下げたり、欠品を防いだり、不良の影響を排除しようとすると、こうなります。多くの製造業が、この価値観ではないでしょうか?
一方、トヨタ生産方式の紹介です。
もちろんここには、世間で言われているように在庫は減らすべき、という記述が続きます。
在庫を抱えるデメリットは何か?一般的にはこう言われています。
- キャッシュフローが悪化する
- 不要な保管場所が必要になる
- 管理が増える
- 品質が悪化する
でも、本の説明は、ちょっと違ったのです。
②トヨタ生産方式
基本姿勢:在庫を低減することに次のような効用があるので、できるだけ在庫を減らすべきである。
・需要変動にすぐ気づくことができる
・平準化が達成されてないことにすぐ気づくことができる
・トラブル時の柔軟性の欠如にすぐ気づくことができる
・期日を守らないサプライヤーにすぐ気づくことができる
・配送のゆらぎにすぐ気づくことができる引用:いま世界ではトヨタ生産方式がどのように進化しているのか!中野冠著 P75-76
いかがでしょうか?ちょっと価値観が違いませんか?
自らの至らなさを、いちはやく発見できるようにしておく。そして、そのために在庫を減らす。まるで修行僧のような姿勢です。
さて、欧米型とトヨタ生産方式、どちらが企業経営として結果が出ているでしょうか?
実際、トヨタ生産方式を徹底している企業は、高い収益性を維持しているケースが多いです。
なぜなら、この姿勢が人を育てる からです。
問題にすぐに気づくことができる環境を作ることで、社員一人ひとりが常に改善を考えるようになります。 そして、問題を解決する力を身につけた人材が増え、結果として企業全体の競争力が向上し、利益率が上がるのです。
つまり、「人を育てる仕組みとしての在庫管理」が、長期的な成果を生むのではないでしょうか?
もちろん必要に応じて、在庫を持つこともあります。社員よりもパートさんが多く、理想通りに行かないこともあります。
でも、大切なのは、どの価値観でいるか?ということ。どういう企業を目指すか?ということ。
工場改善サービス株式会社では、まずはスモールスタートでも「トヨタ生産方式」に取り組む会社を応援します。自分の会社に合うのか?どのぐらいの効果がでるのか?
本業に影響がない範囲でまずはスタートし、広げていくお手伝いをしています。ぜひお気軽にお問い合わせください。