工場改善サービスの田代です。
今日は、工場の話をする前に、私が先日、出張先で体験したことから書かせてください。

29,800円のビジネスホテル

あるビジネスホテルに、5人分の予約を入れました。2カ月前のことです。予約画面には、シングルルーム5部屋で29,800円と表示されていました。1部屋あたり、6,000円ほど。妥当な値段です。

ところが当日、フロントで告げられたのは「1部屋29,800円」でした。ダイナミックプライシングだそうで、早く予約したから安い、というわけでもないらしい。何のイベントもない、地方都市のビジネスホテルです。

フロントの方は、その金額で一点張りでした。「ビジネスホテルですよね?」と聞いても、「お客様がこの内容で予約されていますから」と、予約票を印刷して差し出してくる始末です。

最後に、奥から気の利く女性スタッフが出てきてくれました。「当日料金なら8000円です」。そう言って、事前予約分をキャンセルし、8000円で通してくれました。人が一人、間に入っただけで、話が通じたのです。

QRコードだけ置いて帰る焼肉屋

その夜、知らない土地で焼肉屋に入りました。せっかくの旅先です。何がうまいのか、聞いてみたい気持ちがありました。

けれどスタッフは、「ご注文はこちらのQRから」とタブレットを置いて、行ってしまいました。おすすめの一言も、ありません。

いつから、人の接点は機械に操作されるようになったのか

この2つの出来事に、私は同じ違和感を覚えました。

いつから、人と人との接点は、機械に操作されるようになってしまったのでしょうか。「誰でもできるように」「脱属人化」「効率化」。その掛け声のもとで、人と人との接点が、どんどん簡素化されています。

ビジネスホテルで29,800円はあり得ないのだから、妥当な値段に落ち着くべきでしょう。焼肉屋でも、一言のおすすめがあっていい。

「誰でもできるように」は、裏を返せば、「あなた」である理由を奪っているということです。付加価値が生まれるのは、突き詰めれば、人と人との接点なのではないでしょうか。

工場でも、同じことが起きている

さて、ここからが本題です。工場でも、まったく同じことが起きています。

「誰でもできるように」「属人化を排除する」。その掛け声のもとで、作り手の顔が見えない製造になっている。

誤解しないでください。今どきハンドメイドで作れ、と言っているのではありません。私が話しているのは、方向性です。あなたの工場の作業者は、いつ出荷の、どこ向けのものかも分からずに、ただ作っているのではないでしょうか。

少しでも、「誰の」「どこの」「いつ出荷の」「何に使われる」ものかが分かること。それが、働く人を、人として敬う姿勢なのではないかと思うのです。

だから、私は工場をかき混ぜ続ける

ITも機械も、間違いなく便利にしてくれます。否定はしません。ただ、「使う」と「使われる」は、雲泥の差です。

電車に乗ってもスマホだけを見ている若者のグループ。エレベーターで一言も交わさない人たち。子どもが買いに来たのに、敬語で話しかけるコンビニの店員さん。AI音声で乗車案内をする、大手鉄道会社。人と人との接点が、どんどん失われていく。私は、そういう社会に、そういう工場に、違和感を覚えます。

だから私は、工場をかき混ぜ続けます。

出荷とお客さんがわかり、誰かのために働く、という喜びをもたらすために。

工場は、人を作る場所です。