「うちには関係ない」という思い込み
工場改善サービスの田代です。
先日、あるお客さんに「うちはトヨタ式なんてできませんよ」と言われました。私はこうお返ししました。
「じゃあ皆さん、よほどのお金持ちですね。毎日タクシーで移動しているんですか。私は、管理が楽で安いので、バスや電車に乗りますけど」。
半分は冗談です。けれど、半分は本気でした。トヨタ式と言うと、途端に身構える方がいます。でもそれは、たまたま自動車工場で磨かれた方法というだけのこと。その思想そのものは、実は街中にあふれているのです。
大切なのは、手法ではなく思想
私が前職で教わったトヨタ流のものづくりは、二つの思想で成り立っています。一つは、ニンベンのついた「自働化」。もう一つは、ジャストインタイムです。
手法なら、いくらでもあります。でも本当に大切なのは、その奥にある思想です。
面白いことに、家庭や街中では当たり前にやっていることが、なぜか工場に入ると逆になっている。それを、当たり前の姿に戻してあげる。それが、私の仕事だと思っています。
だって、家で洗濯機を回している間、見守ってないですよね?でも、工場では加工を見守っている人がいます。
「流れで作る」とは何か
今日は、その思想の一つ、「流れで作る」ことについてお話しします。
流れで作るとは、マクロな視点で見たときに、モノのつながり、つまり工程と工程のつながりが、ひと目で分かるようになっている状態のことです。専門用語では「整流化」と言います。
多くの工場は、機械を止めないために、あちこちで分岐し、合流する構造になっています。これを、あえてシンプルな一本の流れにします。
「そんなことをしたら、設備が増えるやんけ」。もっともなツッコミです。ところが、流れを決めると、一つの流れで作る必要数が減ります。すると、設備は能力の低い安いものや、古いもので代用できるようになる。場合によっては、手作業でいけることすらあるのです。
なぜ、そこまでして流れにするのか
答えは、街を見れば分かります。バスや電車は、流れで動いています。街方面へ行く便はいつも同じ通りを通り、海方面へ行く便もいつも同じ方向を通る。
なぜか。そのほうが、圧倒的に管理が楽だからです。
この「管理の楽さ」が、意外と忘れられがちではないでしょうか。たしかに今は計算機の仕組みが発達して、複雑なことを複雑なまま解くこともできます。でも、人の能力を生かそうと思うなら、シンプルで、現場の人に分かりやすいほうがいい。私はそう考えています。
流れにすると、こんなに変わる
流れで作ると、いいことが次々に起こります。
- どこで、何を作ったかが分かる。だから品質が上がる
- 自分の作ったものが、誰のところへ行くかが分かる。だから作る人に、お客さんの顔が見える
- 製品ごとにチームができる。だからチームワークと改善意欲が高まる
- 一つの流れごとに収支が計算できる。だから今日儲かったのか、毎日分かる
複雑な工場では、どれも見えなくなっていたことばかりです。
このシリーズで、お伝えしたいこと
トヨタ式は無理、と身構える必要はありません。バスに乗り、電車に乗り、洗濯機を回す。私たちはもう、その思想を日常で使いこなしているのですから。
今後、何回かに分けて、この「流れで作る」思想を、工場でどう形にしていくのか、具体的な方法をお話ししていきます。
あなたの工場は、流れていますか。それとも、まだ毎日、割高なタクシーに乗り続けていないでしょうか。
