「効率よく作っている」という思い込み
先日、ヤマハ発動機のセミナーを聞きました。登壇されたのは、生産技術本部長で執行役員の茨木さん。今のヤマハのデジタルへの取り組みを紹介するお話でしたが、私がいちばん印象に残ったのは、実は別の一言でした。
茨木さんが学生時代、エンジンの燃焼を研究していたとき、教授からこう言われたそうです。「混合気の気分になって考えろ」。燃える空気と燃料、その気持ちになりきって考えろ、と。
これは、私の仕事にそのまま置き換えられると思いました。工場改善で言えば、「製品の気持ちになって考えてみよう」ということです。
ある部品の、長い一日
少し、想像してみてください。あなたは今日から、一個の部品です。いろいろな人の手を順番に加えられて、やがて製品になっていきます。
あなたは、早く次の工程に進みたい。ところが、どうもそうはいきません。
まず、あなたと同じ種類の仲間が、一カ所に集められます。なぜか知らないけれど、10人の集団にされる。そして、その10人分が全部終わるまで、次へは進めない。手の早い工程ではさっと処理されて送り出されるのに、次の場所で、また待たされる。
そろそろ自分の番かな、と思ったその瞬間。後ろから来た別の部品に、あっさり抜かされます。
しかも、その工場にはいつも決まって痛い場所があります。あなたがそこを通るたびに、最後にガリッと削られる。10人の仲間のうち、誰か一人が、毎回そこで傷物になるのです。おまけに、その傷が見つかるのは、たいてい次の日。傷ついた仲間は、まる一日ほったらかしにされます。そして翌日もまた、同じ場所で同じことが繰り返される。永遠に、そこは直らないのです。
それは、病院で感じるイライラと同じ
モノの立場、製品の気分になってみると、見えてくることがあります。私たちはいかに、自分たちの都合でモノを作っているか。
これは、私たちが病院に通うときと、まったく同じではないでしょうか。長く待たされ、名前を呼ばれず、後から来た人が先に通される。順番の理由も分からない。イライラしますよね。
でも、そのイライラをそっくりそのまま、私たちは毎日、自分の工場の製品に対してやっているのです。
鉄則は、手をつけたらすぐ出す
では、どうすればいいのか。やるべきことは、実はとてもシンプルです。
手をつけたら、すぐに出す。 集団にしてまとめて待たせるのではなく、一個手をつけたら、一個を次へ流す。これが鉄則だと、私は思っています。
まとめた方が効率がいい、という感覚は、あくまで作り手側の都合です。製品の側から見れば、まとめられるたびに、待たされ、抜かされ、傷を放置されている。
最後は、そこへ向かえるか
問題は、この鉄則をやりきれるかどうかです。一個流しなんて無理だ、うちは特別だ。そう言うのは簡単です。
けれど、それを超えられるか。「手をつけたらすぐ出す」という方向に向かって、みんなで一致団結できるか。突き詰めれば、ただそれだけなのだと思います。
あなたの工場の製品は、今日、何回待たされ、何回抜かされ、何回痛い目に遭ったでしょうか。一度、その子たちの気持ちになって、ラインを眺めてみてください。
