「失敗できない」という思い込み
工場改善サービスの田代です。
私は現場に伺うと、珍しいと言われるのですが、必ず何かを変えさせてもらいます。データを出して報告書を書いて終わり、ではなく、その場で実際に何かを変える。この癖の原点は、前職のトヨタにあります。
それは「トライする」ということです。
トヨタで学んだ、休憩時間の45分
私は前職のトヨタ自動車で、車を検査する部署の技術職でした。新しい検査項目を考えたり、生産性を上げる検査方法、品質対策のための仕組みを、日々改善していく仕事です。
ところが、その工場では1日に何百台もの車が量産されています。動いているラインに、新しいことを持ち込む。これは、現場にとても嫌がられます。当然です。止まったら、量産に響くのですから。
そこで私たちがやっていたのが、「トライ」でした。
昼の休憩時間の45分。昼勤と夜勤が入れ替わる間の45分。あるいは、わずか10分の休憩。そのすきまを狙って、新しいことを試すのです。設備の設定を変えて何回も車を流してみる。わざと不良を仕込んで、ちゃんと検出できるか確かめる。
大事なのは、行き当たりばったりでやらないことです。何月何日の昼休憩にこれをやる、と事前に決める。現場のトライする人の都合も調整する。何を検証したいのか、どういう結果が得られれば成功とするのか。そこまで想定してから、実際にやるのです。
失敗していい。だって、トライだから
もちろん、失敗することもあります。でも、それで本当の量産が止まることはありません。なぜなら、あくまで「トライ」だからです。
うまくいけば、それを本番に広げていけばいい。うまくいかなければ、やめればいい。それだけのこと。
この「トライする」文化が、トヨタには確かにありました。安心して、新しいことができる。そして、それを認め、サポートしてくれる空気があった。私はそこで、本当に多くを勉強させてもらったと思っています。そして今、この文化こそが、私の改善の軸になっています。
改善も、まったく同じです
今の私の改善も、根っこはこのトヨタのイメージです。
今の作り方より、新しい流し方、製造方法を考える。ジャストインタイムに、より近いやり方へ。でも、それを工場全体で一気にやるのは難しい。だから、小さくこのエリアだけ、と決めて、まずやってみる。私がよく「モデル工程」と呼ぶものです。
一瞬でもいいから、目指す姿を実際に作り上げてみる。それが、トライの概念です。私の頭の中には、いつもあのトヨタの光景、安全な場で新しいことを試すイメージがあります。
そのためには、準備が要ります。段取り八割。何をやるのか、どんな結果が得られれば、何を評価するのか。そこを決めてから臨むのです。
その文化は、誰がつくるのか
こうして小さく試し、どんどん検証していく。その挑戦を認める。そして、やり続ける。これには、文化が要ります。
では、その文化は、どこから生まれるのか。現場からは、出てきません。経営者から出てくるのです。経営者が「失敗していいから、小さく試そう」と自ら場をつくる。それが繰り返されるうちに、暗黙の了解になり、やがて文化になっていきます。トヨタのトライする文化も、きっとそうやって根づいてきたのだと思います。
全部を一度に変えるのは、大変です。だから、小さく、新しく、安全な場で。私の頭の中は、ずっとこのイメージで動いています。
あなたの会社では、トライしていますか。
